ゲノムプロジェクトの終焉とともに、遺伝子産物の機能解析、有効利用が注目されてきている。本研究では、酵素を1分子のスイッチと見立て、その活性を可逆的にON/0FF制御できるシステムの構築や、そのシステムを用いた分析、更には酵素の阻害剤のスクリーニングに関する研究を展開している。具体的には、1)新規酵素固定化担体の開発、2)Co(II)イオン計測用ALP(アルカリホスファターゼ)の開発、3)酸性ウレアーゼ阻害剤のスクリーニング、であった。 昨年度の研究において、骨格にアミノ基を有する新規なモノリスシリカの作成方法を開発し、固定化担体として、酵素を高密度で集積できること、微量の試料を迅速かつ高感度に分析できること等の有用性を例証した。また、金属酵素を固定化、その活性に必須な金属を除去・付与することにより酵素活性のON/0FFを容易に制御できるフローシステムを構築した。そのシステムにより、Zn(II)イオン、Mg(II)イオンおよびCo(II)イオンの計測を行い、Zn(II)イオンにおいては、数十μLの試料からppbレベルでの検出を可能としてきた(Co(II)イオンにおいてはCo補因子型ALPの構築を完了しておらず、今年度継続して行く予定である)。更に、酸性ウレアーゼの阻害剤スクリーニングにおいては、市販生薬を対象に行い、ダイオウに、従来の阻害剤以上に持続性のある(不可逆的に活性を阻害する)酸性ウレアーゼ阻害物質が含まれていることを見出した。今後さらに精製を進めることにより非活性が向上することが見込まれ、抗ピロリ菌能を有する物質の発見に期待がもたれる。
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