研究概要 |
ゲノムプロジェクトの終焉とともに、遺伝子産物の機能解析、有効利用が注目されてきている。 本研究では、酵素を1分子のスイッチと見立て、その活性を可逆的にON/ OFF制御できるシステムの構築や、そのシステムを用いた分析、更には酵素の阻害剤のスクリーニングに関する研究を展開している。具体的には、1) 新規酵素固定化担体の開発、2) 金属イオン計測用ALP(アルカリホスファターゼ) の開発、3) 酸性ウレアーゼ阻害剤のスクリーニング、であった。1) に関しては、一昨年度の研究において達成し、2)、3), に関しての進展が課題として挙げられていた。2) に関して、開発した酵素活性を可逆的にON/ OFF制御できるシステムを用いることにより、Mg (II) イオンを20μM〜100FMの間で計測できることが示された。3) に関しては、持続性を指標とした酸性ウレアーゼ阻害剤の評価において、既知のヒドロキシ尿素は阻害が可逆的であること、アセトヒドロキサム酸では活性が回復してくるが半不可逆的であることを例証した。また、スクリーニングにおいては、市販生薬を対象に行い、ダイオウ抽出物中に、ほぼ不可逆的に阻害する、従来の阻害剤以上に効果が期待できる酸性ウレアーゼ阻害物質が含まれていることを見出した。 これらの結果から、酵素を分子スイッチとして制御できる系を構築し、その活性を指標として新たな金属分析用バイオセンシングシステムを開発し、また、酵素活性の不可逆的阻害を容易に評価できる、従来ではできなかった効果的な薬剤評価法を開発でき、その意義は極めて大きいと思われる。
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