本研究では、物質固有の磁化率と密度の違いにより複数の物質が同時に高速かつ高効率で分離できる磁気アルキメデス分離の原理に基づき、医療分析にも適用可能な多成分同時定量分析手法の開発を目指している。このため、分離の基材物質となる材料の検討、より効率的な分離を実現するための磁場分布の検討、および、磁場中での観測手法についての検討を進めた。前年度には、基材物質としていくつかの無機材料または高分子材料をベースに、いくらかの金属等を含有させる方法を検討し、配合割合の制御のみでは分離が不十分な場合が多いこと、組み合わせの異なる物質を使用するほうが有利であることを明らかにした。また、空間磁場分布に関しては、同一平面内でより均一な磁場を得る方法について、超伝導磁石による磁場空間内に磁性体を配置し、その大きさや位置を変化させることで制御する手法について検討したところ、磁性体の形状次第で容易に制御可能なこと、広い空間の磁場を制御するには、単純な形状では難しいことが明らかとなった。平成20年度は、基材物質として選択した数種の材料にそれぞれ異なる添加物が含まれる微粒子の磁気アルキメデス分離について検討し、20μm程度までの分離が可能であることを明らかにした。また、磁場分布の検討では、超伝導磁石の磁場空間内で材料を対称に配置した場合に、より高分解能の空間磁場設計が可能になるケースがあることを見出した。また、分離の観測・評価手法についても、発光材料の活用により、利便性の高い検出が可能であることがわかった。これらの成果により、磁気アルキメデス分離手法が多成分同時定量分析へ適用できることを示すことができた。
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