糖鎖を有するリビングラジカル重合の開始剤の合成をスケールアップしておこなった。次に、その開始剤を用いてスチレンの重合を行い、親水部と疎水部を制御したポリマーの合成とそのスケールアップを行った。SEC測定、NMR測定、比旋光度測定、およびFID検出器付薄層クロマトグラフィー測定を行い、生成物である糖末端ポリスチレンの分子量や末端修飾率の算出を行った。さらに、生成ポリマーの有機溶媒中における高分子逆ミセル形成能を、光散乱測定と蛍光分光測定により調べた。糖鎖としてオリゴ糖を用いることで、会合数の大きな逆ミセルが得られることが示された。しかし、開始剤合成に関しては、オリゴ糖よりも単糖を用いたほうが非常に簡便であり、大量合成の場合にはさらに顕著である。したがって、オリゴ糖を末端に有するポリスチレンをごく少量添加することによって、単糖を末端に有するポリスチレンで形成する高分子逆ミセルの会合数や粒径を増大させることができれば、親水部と疎水部の制御が簡便におこなうことができると考えた。そこで、単糖を末端に有するポリスチレンの溶液に、オリゴ糖を末端に有するポリスチレンを少量加え、会合数や粒径の変化を調べた。その結果、オリゴ糖を末端に有するポリスチレンを5パーセント加えることで、会合体の分子量が4倍に増えるという実験結果を得た。また、集合状態にあるサンプル溶液をキャストすることにより、親疎水性のミクロ不均質構造を有するフィルムが得られることについても明らかにした。
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