グルコースおよびそれが連結したオリゴ糖(マルトオリゴ糖)などの糖鎖を末端に有するポリスチレンを合成し、それらがトルエン、クロロホルム、およびテトラヒドロフランなどのポリスチレンの良溶媒中において、糖鎖をコア、ポリスチレンをシェルとする逆ミセル状の集合体として存在することがNMRおよび動的光散乱測定により明らかとなった。この高分子逆ミセルの溶液はスピンコートにより、親-疎水性のミクロ不均質構造からなるフィルムを与えることが透過型顕微鏡観察より示された。 高分子逆ミセルの会合数あるいは分子量は、親-疎水性ミクロ不均質構造の親水部のサイズや密度を制御する重要なパラメーターであると考えた。そこで逆ミセル形成能とポリマーの一次構造との相関を見出すために静的光散乱測定を行った。その結果、オリゴ糖鎖を増加させるほど逆ミセルの会合数は増加すること、すなわち親水部のサイズを増加させることが可能であることがわかった。いっぽう、ポリスチレンの重合度を増加させた場合には、逆ミセルの分子量に大きな変化はみられず、そのかわり会合数が減少することがわかった。すなわち後者の分子設計は親-疎水性ミクロ不均質構造の親水部のサイズおよび密度を減少させる場合に有効であることが示唆された。以上は血液接触面コート剤の開発に繋がる重要な知見であると考えている。 さらに本年度は末端にシクロデキストリンを有するポリスチレンを新たに合成した。それらの水中での会合特性についてフランス共和国の研究所との共同研究を進めた。また、ポリスチレン(A)および糖鎖を側鎖に有するポリスチレン(B)からなるABジブロックコポリマーの合成を行い、それらの有機溶媒および水中での高分子集合体の形成能について調べた。
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