これまでに酵素反応による糖ペプチドや配糖体の糖鎖合成反応は究めて多く報告されているが、高分子、界面、糖脂質への配糖化は困難であった。それは、酵素がタンパク質でできているためであり、界面付近での酵素の失活や基質への近接不可能、さらに、基質可溶化のための有機溶媒等の添加による変性が原因として挙げられる。従って、これら特異的な環境に特化した酵素反応の反応場のデザインをする必要性があった。以下、前年度の結果を基に検討し今年度の成果を示す 1. 多糖の特性を活用した糖脂質の合成 脂溶性分子を包接することで知られるデンプンとカードランに糖脂質を包摂させ、デンプンまたはカードランを加水分解する酵素を作用させたところ、オリゴ糖を有する糖脂質を好収率でえた。また、糖脂質のアグリコン部位を変えることにより、糖の結合位置が変化することが明らかになった。今後、非天然型糖鎖を有する糖脂質を、高位置選択的に得る条件を検討していく。 2. アマドリ転位反応を活用する糖タンパク質の合成 アマドリ転位反応を活用してリゾチームとRNA分解酵素に対してセロビオースを導入したところ、50%程度の収率で目的糖タンパク質を得た。これらに対し、酵素的配糖化反応を行い、質量分析及び電気泳動を用いて反応物を分析したところ、所望の糖タンパク質の生成を確認した。また、ペプチドマッピングにより糖鎖はリジン残基に特異的に導入されていることが明らかになった。現在、収率の向上と分離条件の検討を行っている。 3. 今後の展望 別の研究成果により、酵素反応に適した基質が簡便に得ることが可能になった。当該技術を本研究に取り込むことにより、本研究が加速度的に進展することが期待できる。
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