研究概要 |
多糖の人工合成は構造明確で純粋な生成物が得られることから,多糖の特性を評価する上で重要である.また,天然から得られる多糖とは物理的性状の異なるものが得られる可能性があり,新素材としても有望である.多糖の人工合成法のうち,化学-酵素法は,他の合成法と比較して純粋な糖鎖が得やすいという特長がある.本研究ではモノマーである,活性化糖誘導体を水溶液中においてヒドロキシ基の保護を行わずに一段階で合成し,それに引き続き酵素触媒重合を行うことで,ワンポットでの多糖合成法の確立を目指し,本年度は以下の研究計画に基づき行った. 1.糖オキサゾリン誘導体の一段階合成における収率改善 糖オキサゾリン誘導体の一段階合成における収率改善を目的として,脱水縮合剤に代表される様々な求電子剤を探索した.その結果,ホルミアミジニウム誘導体を求電子剤とする脱水縮合反応が水中においても非常に高い収率で対応する糖オキサゾリン誘導体を合成できることが見出された.来年度では,この手法を用いる多糖合成を行う予定である. 2.優れた脱離基を持つ活性化糖誘導体の一段階合成 脱離基を持つ活性化糖誘導体は多糖合成だけでなく,配糖体合成に非常に有用な基質となる.このため,優れた脱離基を持つ活性化糖誘導体の合成を目的どして,糖オキサゾリン誘導体の合成法と同様に脱水縮合剤に代表される様々な求電子剤を探索した.その結果,トリアジン骨格を有する脱水縮合剤を用いることで,中程度の収率で活性化糖誘導体を合成することができた.また,トリアジン骨格の置換基の違いが脱離能に大きく影響することがわかり,反応性の制御が容易に行えることが示唆された.来年度では,卜リアジン骨格を持つ糖誘導体の合成収率の改善と多糖合成を行う予定である.
|