研究概要 |
多糖の人工合成は構造明確で純粋な生成物が得られることから, 多糖の特性を評価する上で重要である. また, 天然から得られる多糖とは物理的性状の異なるものが得られる可能性があり, 新素材としても有望である. 多糖の人工合成法のうち, 化学-酵素法は, 他の合成法と比較して純粋な糖鎖が得やすいという特長がある. 本研究ではモノマーである, 活性化糖誘導体の一段階合成とそれに引き続く酵素触媒重合の反応条件の検討を行った. 1. 糖オキサゾリン誘導体の一段階合成における収率改善と重合反応への適用 本年度は, 前年度に達成した糖オキサゾリン誘導体の合成法である, ホルミアミジニウム誘導体を求電子剤とする糖オキサゾリン誘導体合成法を用いてワンポットでのキトオリゴ糖合成を試みた. この手法を用いて活性化した後に酵素触媒重合を行ったが, 活性化剤であるホルムアミジニウム誘導体により酵素が失活してしまったため, 高重合度の人工キチンを得ることはできなかった. 酵素が重合活性を維持できる糖オキサゾリン誘導体の合成条件並びに過酷な反応条件においても活性が保てる酵素の探索が今後の課題である. 2. 優れた脱離基を持つ活性化糖誘導体の一段階合成と重合反応への適用 本年度は, 前年度に達成した糖トリアジン誘導体を用いる多糖の合成反応を行った, 単離した糖トリアジン誘導体を用いて重合反応を行ったところ、重合度30程度のオリゴマーが得られることが分かった. しかし, 当初の目的である活性化と重合を並行して行う場合には糖オキサゾリン誘導体の場合と同様, 酵素の活性維持が難しく, 重合反応は進行しなかった. また, 糖トリアジン誘導体の合成では30%程度生成する副生物のため, 重合反応を阻害していることも考えられた. 糖オキサゾリン誘導体と同様に, 重合活性を維持できる反応条件並びに酵素の探索と糖トリアジン誘導体の選択的合成法の確立が今後の課題である.
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