研究概要 |
本研究者は, 近年, フェノール類の水酸基に機能分子を導入したデザイン型フェノールを用いてノボラックの合成を行うと, 従来困難であったポリマーの主鎖構造, 結合様式, 分子量や高次構造の制御が可能なことを提唱している。この新しい概念の重合法により, 直鎖状, 熱可塑性, 超高分子量ノボラックの合成が可能となっただけでなく, 10ナノ程度の芳香族系微粒子や立体規則性高分子の構築にも成功した。現在, これらのポリマーの性質を明らかにするとともにブレンド, 有機/無機複合化, 光機能化などの手法を用いて, フェノール樹脂の優れた耐熱性や機械的特性が生かされたナノマテリアルの開発を行っている。たとえば, デザイン型フェノールは, 反応場の効果によりユニークな重合挙動を示す。たとえば高い対称陸を持つ3官能性の1, 3, 5-トリメトキシベンゼンとホルムアルデヒドとを塩酸触媒により重合すると, 溶媒を変化させるだけで直鎖状立体規則性高分子(テトラヒドロフランの場合), 多分岐高分子(クロロホルムの場合), 内部環状構造を持つハニカム型ナノ微粒子(酢酸・クロロホルム混合溶媒の場合)をそれぞれ選択的に合成できることを発見した。このほか、マイクロ波を利用したフェノール樹脂の高速合成やナノロッドの合成にも成功している。
|