本研究の目的は、独自の非遷移金属触媒反応と光化学反応を利用した新しい型のリビンクラジカル重合(LRP)を二種、開拓することにあった。本年度は、第一に、非遷移金属触媒型LRPについて、触媒の元素種を前年までのゲルマニウムとリンから、窒素および酸素に拡張することに成功し、多彩な触媒を創出した。特に、触媒として、汎用化合物であるイミド類やアルコール類の利用に成功し、それらが入手容易である点は特色である。アルコール類には、ビタミンE、ビタミンC、フラボノイド等の天然物も利用でき、これらは環境安全性に特に優れる。窒素および酸素系触媒は、スチレンやメタクリレート等の制御に有効であった。そして、官能基耐性に優れ、例えば、水酸基、エポキシ基、ポリエチレングリコール基、ジメチルアミノ基、カルボキシル基等をもつ機能性メタクリレートの単独重合/ランダム共重合/ブロック共重合の制御に成功した。また、これらの触媒は、その使用量も少なく、触媒の高い活性が認められた。本年度は、第二に、キノリン基を光吸収アンテナとして有する独自の保護基を開発し、これを用いた(光脱保護に基づいた)光誘起型重合に初歩的な成功を収めた。キノリン基は収光係数が大きく、高感度の光アンテナであった。光は、重合を局所的に望むタイミングで誘起する有効な手段であり、熱で分解するモノマーの重合や、表面開始グラフト重合で光リソグラフィを可能とするなど、光ならではの独自の応用分野を持ちうる。
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