平成19年度は、汎用ポリマーブロック上に超臨界高圧浸透原子移動ラジカル重合(ATRP)法により、PMMA膜を作製することに取り組み、ナイロン樹脂上にPMMAを固定化することに成功した。これらの種々のポリマーブロックとPMMA、超臨界二酸化炭素との親和性も超臨界高圧浸透ATRP法適用の可否を通して、ある程度データベース化できた。スチレンの超臨界高圧浸透リビングラジカル重合に関しては、ATRPよりもスチレンとの相性が良いニトロキシド媒介重合(NMP)を採用し、NMP触媒の合成に並行して、スチレン、超臨界二酸化炭素と各種汎用ポリマーブロックとの親和性の評価に着手した。ポリマーの膨潤度と重合速度のバランスコントロールのところで課題が見つかり、目下そのバランス制御に取り組んでいる。さらに、実施計画にあった汎用ポリマーの超臨界高圧浸透リビングラジカル重合による表面改質のみならず、表面改質後のポリマーブロックにPMMAに次いで、第三種の高分子種である、HEMAの重合にも成功し、研究期間前半を所属変更による移管手続きに要したにもかかわらず、初年度の計画以上の成果を確保できたものと考えている。 リビングラジカル重合により汎用ポリマーの表面改質に成功したことは、今後、多種多様なポリマー多層膜やポリマーブレンドを簡便且つ高制御下で作製できる手法を開発したという意味で、新しい高分子表面の改質技術、ポリマーブレンド作製技術として応用面でも重要且つ今後の発展性の大きな技術開発ができたと考えている。次年度は、反応条件の最適化等に系統的に取り組み、超臨界高圧浸透リビングラジカル重合法の確立と、いよいよ表面改質困難なフルオロポリマーの超臨界高圧浸透リビングラジカル重合に着手し、全研究計画の履行を目指す。
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