研究概要 |
高分子微粒子は, 近年, 微粒子形態のままでの機能性材料として注目を集めている。高分子微粒子はベースポリマーに各種官能基を有する成分を共重合し多成分化することで機能化が図られる。本研究者らは, 等温滴定型熱量計(ITC)を用いて粒子表面および内部のカルボキシル基の定量と分布状態の推察を行った。これまでの検討では, 粒子表面から内部にアルカリを浸透させ, 存在するカルボキシル基との中和反応により生じた中和反応熱量からカルボキシル基を定量し, 分布の推察を試みた。ITCによりその測定の可能性が示されたが, ガラス転移温度(Tg)がITC測定温度よりも低い高分子微粒子しか, その測定対象とならなかった。本年度, 本研究では, 工業的に汎用に行われている乳化重合の一括モノマー添加系(バッチ重合系)において, 重合時の撹拌状態が異なる系で作製した2種類のカルボキシル化ポリスチレン粒子を対象試料とした。この系では, 重合中粒子内に多量のモノマーが残存することが問題となったが, 分子鎖の配置をできるだけ変えずにモノマーを取り除く工夫を行った。重合時に経時的にサンプリングを行い, 粒子表面の官能基量を測定することにより, それを累積し, 粒子内分布の推察を試みたところ, 乳化重合系においてもこのITCを用いた手法は官能基分布の評価法として適用された。さらに, 重合時における撹拌条件により, 作製されるカルボキシル化ポリスチレン粒子のカルボキシル基分布が大きく異なることを明らかにし, その生成メカニズムも詳細に明らかにすることができた。
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