研究概要 |
これまで,四級化アンモニウム系イオン液体([DEME][TFSI])中でのスチレンの分散重合において,最適条件においては,粒子径が350nm程度,変動係数が5.7%と単分散なポリスチレン(PS)粒子が得られており,初めてイオン液体中でのps粒子の合成に成功しているが,本年度は,イミダゾリウム系のイオン液体([Bmim][BF_4])中においても粒子の合成が可能であり,粒子径・粒子径分布の制御が可能であることを明らかにした。また,同条件でエタノール中,スチレンの分散重合を行い,重合速度及び得られたPSの分子量を比較,検討した結果,エタノール中に比べ[DEME][TFSI]中の方が重合速度が非常に速く,分子量においても重合を通して高分子量のPSが得られていた。均一系における報告同様,連続層において,イオン液体の方が粘度が高いために停止反応が抑制されたことが考えられるが,同程度の粘度を有する[Bmim][BF4]系において,重合速度の増加が見られなかったことより,イオン液体の種類により成長反応の増大などが起こることが示唆され,非常に興味深い結果が得られた。 さらに,イオン液体が不揮発性,及び高耐熱性といった特徴を有することに着目し,イオン液体中,ε-カプロラクタムの180℃での加水分解重合によりナイロン6粒子の合成を試みた。その結果,スチレンの分散重合系同様,重合前は均一系であったが,重合後は系全体が白濁した不均一系になった。得られた生成物をSEMにて観察したところ,ナイロン6が結晶性のためか球状ではない異形粒子の生成が確認でき,イオン液体を媒体とした高温での加水分解重合によるナイロン6粒子の合成が可能であることを明らかにした。ただ,この様にして得られナイロン6粒子の分子量は2000程度と低重合度であり,さらなる検討の必要があるが,イオン液体の種類や重合時間など重合条件を変化させることで,分子量が増加する傾向が観察されており,重合度向上の可能性が示唆された。
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