気水界面での単分子膜の構造・特性は詳細に調査されているが、それに比して、液-液界面における研究は評価の困難さから報告例が圧倒的に少ない。しかし、液-液界面は、気水界面よりもはるかに多様であり、生体反応、分離・抽出反応など、液-液界面がかかわる事象は非常に多い。そこで、本研究では、これまで行ってきた気水界面での高分子グラフト粒子膜系を液-液界面に発展させ、その評価を試みた。 液-液界面の表面張力を正確に評価するためには、水平な界面を形成させることが必須となるが、一般的なトラフを使用した場合には、濡れ性の問題により油層と水層の均一な界面を形成させることが難しい。そこで、一般的なLangmuirトラフを改良し、周囲に溝をもつ液-液界面用トラフを作製し、実験に用いた。油層としてデカンを用いポリメタクリル酸メチル(PMMA)グラフトポリスチレンラテックスを用いて、気水界面および液-液界面での挙動を比較した。気-水界面、油-水界面いずれの場合にも、グラフト鎖の分子量の増加に伴い、表面圧上昇の始まる面積が大きくなる傾向が見られた。しかし、グラフト鎖の分子量が大きいものほど、気-水界面とデカン-水界面におけるπ-A等温線の差が大きく、気-水界面上よりもデカン-水界面におけるπ-A等温線の初期勾配が緩やかになり、より広い面積から表面圧が上昇することを確認した。 今後、上記のような分子量依存性を詳細に検討するとともに、油層側の液体として様々な種類の液体を用いることにより、液-液界面の表面張力が粒子膜に与える効果を評価したい。さらに、これまでに合成を行った種種の高分子鎖を有する高分子グラフト微粒子を用いることにより、系統的に液-液界面系での粒子膜の構造を調査する予定である。
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