研究概要 |
フレキシブルなπ共役系の構築を目的として,スルホニル架橋型アニリン3量体を合成し,蛍光スペクトルを測定した.その結果、溶媒の誘電率の低下に伴って蛍光強度の増加が見られた.また,エタノール-グリセリン混合溶媒において,粘性と蛍光強度の間に非常に良い相関が得られた.本結果はスルホニル架橋型アニリンオリゴマー3量体が極性および粘性プローブとして機能することを示唆している.また,量子化学計算で得られた安定配座はX線結晶構造解析の構造と良く一致し,予想したアミノ基とスルフィニル基間の水素結合が構造の安定化に寄与していることが明らかになった.また,アニソールとニトロベンゼンから成るスルフィニル誘導体において,X線結晶構造解析によりanti-異性体でO…N…O相互作用が確認された.syn-異性体ではこのような相互作用は確認されず,syn-およびanti-異性体間でUVスペクトルに顕著な違いが確認されたことから,溶液中においても同様の相互作用の存在が示唆された.C2対称な不斉配位子の合成を目的として,酒石酸を用いたスルフィニル架橋型アニリン3量体の光学分割を検討した.その結果,最高で10%eeであった.また,酒石酸を用いて医薬中間体として有用な2-メチルピペラジンの光学分割に成功し,その分割時の結晶構造を明らかにした.光学活性なスルフィニル誘導体を配位子に用いた不斉触媒反応を目的として,イミダゾールとピリジン骨格を有する光学活性なスルフィニル誘導体を合成し,銅を用いた不斉シクロプロパン化反応を検討した.その結果,35%eeの不斉収率が得られた. また,イミダゾール骨格を増やすことで不斉収率が増加することが明らかになった.
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