研究課題
スルホニル架橋型アニリン3量体1を合成した。その結果、予想したとおり水素結合能が高くなったことがX線結晶構造解析およびNMRスペクトルから支持され、蛍光を発することが明らかになった。しかし、量子効率が低く実用レベルに達しなかった。そこで原因を調べるために1の蛍光特性を詳細に調査した。その結果、溶媒の誘電率が高いほど長波長シフトし、強度は減少することが明らかになった。この際、吸収スペクトルに著しい変化は見られなかった。また、エタノール-グリセロール混合系において溶液の粘度の増加に伴い蛍光強度が増大した。単結晶X線構造解析を行った結果、1の末端Ar基が共役に不利なねじれた構造であること、そしてアミノ基間とスルホニル基間のペプチドミメティックな分子内水素結合が構造の安定化に寄与していることが明らかになった。以上の結果より、1の蛍光特性は、分子内水素結合と極性溶媒によって安定化されたTICT状態による現象と考察し、余計な水素結合を排除するためにメトキシ基を有するスルホニル架橋型3量体2を合成した。その結果、2の蛍光量子収率はΦ=0.6であり1よりも一桁以上高く実用レベルの値を示した。しかし一方で、蛍光スペクトルと吸収スペクトルは共に溶媒の極性および粘性の変化に対して全く応答を示さなかった。そこで、環境応答性の獲得を目的として、チオラートによる2の脱メチル化反応によるフェノール骨格への変換を検討した。その結果興味深いことに、脱メチル化ではなく、分子内求核置換反応が進行した環化生成物が得られた。また、驚くべき事に環化生成物の蛍光量子収率は実用レベルのΦ=0.6を示し、さらに、溶媒の違いで蛍光強度と波長が著しく変化することが明らかになった。
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Acta Crystallographica, Section E : Structure Reports Online
巻: E66 ページ: o1677
巻: E66 ページ: o1665
http://bio.yz.yamagata-u.ac.jp/L_katagiri.html