歯や骨・貝殻真珠層などのバイオミネラル(生体硬組織)は精緻な階層構造を有する機能性材料の最適なモデルである。バイオミネラルは、生体高分子の働きにより、常温・常圧で自己組織的に構築する。また、その構造に由来する機械的強度、光学的機能を有している。これまでに加藤研究室で開発された、高分子の自己組織的な相互作用を活用した薄膜結晶の作製技術を駆使して、一様々な構造を持つ複合材料が作製されてきた。本研究は濃厚高分子ブラシを用いた複合体の構築について、炭酸カルシウムの結晶成長制御によって行ってきた。本年度は、これまでに確立した感温性高分子ブラシの作製方法と結晶成長実験の手法を用いて、様々な条件で実験を行った。高分子ブラシの表面に破断面を作り結晶成長を行うと、繊維状炭酸カルシウム結晶がポリマーマトリクスに形成した。ファイバー状結晶は配向がそろっていた。破断面を巨視的に並べることにより、精緻で階層的な複合体の作製にも成功している。得られるファイバー状結晶の多形はバテライトであり、薄膜部位と同じであることが確認されている。ファイバー状結晶の詳細な観察を行ったところ、マトリクスの傷部分の裏面からファイバー状結晶の核形成と結晶成長が起こっていることがわかった。また、ファイバー状結晶は微結晶集合体であり、メソクリスタルの一つであることがわかった。以上、本年度は高分子ブラシを用いた新しい複合体の構築に成功した。
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