細孔サイズが異なる多孔性金属錯体の細孔にポリエチレングリコール(PEG)を導入し、その融点を測定したところ、細孔サイズに強く依存し、かつ極小値を持って変化することが分かった。つまり、ここでは高分子数本程度の集合体の融点を初めて観測し、また細孔サイズの依存性、すなわち高分子の本数に依存した融点の変化を明らかにした。また、細孔のサイズが最も小さい細孔中では融点は観測されなかった。これはその細孔中ではPEGは単分子鎖の状態で取り込まれており、融解という協同的な現象を発現できなかったことを示している。 次に、細孔サイズはほぼ同じであるが、配位子の置換基が異なる錯体類の細孔中でのPEGの融点の比較を行った。それぞれの錯体の細孔表面とPEGとの相互作用の強さを測定し、相互作用が強いほど細孔表面に強くトラップされ、融点が上昇することが分かった。最も高い融点と低い融点では約90℃の差があり、細孔表面の修飾により高分子の集合状態を大きく変えることが可能であることが示された。このような細孔表面の修飾は活性炭やゼオライトなど既存の多孔体では困難であり、多孔性金属錯体の高い設計性により初めて可能となった。
|