研究概要 |
多孔性金属錯体の細孔のサイズや表面環境は様々に変化させることができるため. その細孔中に高分子を導入することで、細孔中における高分子の本数や環境を自在にかつ厳密にコントロールすることが可能となる。そのような細孔に取り込まれた高分子鎖数本の集合体がどのような物性を示すかということは、高分子ナノ材料の物性評価という観点から非常に重要である。本研究では、疎水性空間における疎水性の直鎖アルカンの相転移挙動を調べることで、ホストーゲスト間の親和性がゲストの相転移挙動にどのような影響を与えるか検討を行った。多孔性金属錯体 [Cu2(L)2(triethylenediamine)]nのジカルボキシレート配位子Lを系統的に変化させ、一連の錯体を合成した。直鎖アルカンC30H62のトルエン溶液にそれぞれの錯体を浸漬した後、真空下で120℃に加熱してアルカンを細孔内へと導入した。粉末X線回折、窒素吸着測定などにより多孔性骨格を保持したまま細孔内に直鎖アルカンを導入できたことを確認した。DSCにより、細孔サイズが異なる細孔中でのC30H62の融点を測定したところ、細孔サイズに強く依存して融点が変化した。また、鎖長の異なるCnH2n+2(n=30,40,50)を錯体に同様に導入してDSC測定を行ったところ、どのアルカンにおいても融点はバルク状態より高くなり、また鎖長が長くなるに従ってその差が広がることが分かった。これは鎖長が長いほど一分子あたりのホストーゲスト問相互作用が増え、より凝固状態が安定化されたためと考えられる。
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