研究概要 |
■ 分子シミュレーション:グランドカノニカル(grand canonical (GC))アンサンブル(温度,体積,化学ポテンシャル一定)に基づく経路積分モンテカルロ(path integral Monte Carlo (PIMC))法を採用し,細孔内量子流体の吸着挙動を解析するためのシミュレーションコードの開発を行った。H20年度には,系の温度が低くなるほど平衡に達するまでの計算ステップが多くなり,計算が非効率となる事が明らかになった。H21年度ではこの問題を解決するため,Feynmanの経路積分に基づくポリマー分子(一つの量子分子を表す)の構成ビーズの空間分布を,Bisection法によってサンプリングする手法を採用し,ビーズの移動試行を容易に行えるようアルゴリズムの改良を行なった。開発したシミュレーションコードを用いて規則細孔性固体への量子流体の吸着挙動に関する計算を行い,気体吸着実験によって得られた特異な吸着挙動の解明を試みた。 ■ 気体吸着実験:極低温(4K以上)における吸着等温線測定を行なうための装置開発を完了し,各種多孔体へのH_2,D_2,Ne,Ar, Kr吸着等温線の測定を行った。比較的質量の大きなNe(27K)においても量子効果の寄与は大きく,Ar,Krのような古典流体が示す細孔内P-T相図(バルク臨界定数によって規格化)とは大きなずれを生じており,対応状態の原理が成り立たないといった特異な吸着現象が明らかになった。
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