研究課題
有機スピン源とコバルトイオンの強磁性的相互作用から成るヘテロスピン単分子磁石を超分子的なアプローチに従って分子配向させ、その分子構造と磁気的性質を明らかとすることを目的とした課題研究であった。ヘテロスピン単分子磁石の基本骨格は、有機スピン源とコバルトイオンから成る歪んだ八面体錯体であり、合成法及び「剛体溶液中」での挙動については、2005年に既に報告済みであった。しかし、分子間の強い磁気的相互作用の存在する「結晶状態」では、単分子磁石の磁気的性質が全く確認できなかった事から、分子間に全く磁気的相互作用がない状態、即ち孤立した分子の「結晶状態」における挙動について早急に確認する必要があった。そこで、立体的に嵩高い置換基を導入することにより「結晶状態」で単分子磁石的挙動を示す、ヘテロスピン単分子磁石の構築に成功し、報告した (JACS2008) 。以上のように、「剛体溶液」、「分子間に相互作用の無い状態」と「分子間に強い磁気的相互作用が存在する状態」での情報が得られた事から、その中間状態である「弱い磁気的相互作用が存在する超分子系」を分子設計し、その磁気的挙動を制御する事を狙った。分子設計として、アルキル置換基による分子間疎水結合による分子間制御を試み、メトキシ基 (-OMe) からドデシル基 (-C_12H_25) までアルキル基の長さを変えた錯体を構築し、その挙動について考察した。その結果結晶状態において、アルキル基の長さと超分子構造の系統的な関係を見出すことは出来なかったが、剛体溶液中では長さに依存した挙動を示した。それに従うと、超分子構造を持つ弱い分子間相互作用が存在する系では、スピングラス的挙動を示すことが明らかとなった。また、単核単分子磁石からの発展系である複核単分子磁石及び一次元磁石についても研究を進展させ、それぞれ重要な知見を含む結果が得られた。
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