研究概要 |
長鎖アルキル基を導入したフラーレン誘導体は、有機溶媒中にてフラーレン間のπ-π、アルキル鎖間のvan der Waals相互作用のコントラストにより、両親媒性分子として働く。この分子間相互作用を精密に制御することで、マイクロサイズのフラワー状組織体、表面にナノサイズのフレーク構造を持つ微粒子の創製に成功した。有機化合物を素材とする複雑なフラワー状組織体の形成は非常に稀な例であるが、中間組織体を示すことで、その形成メカニズムを提唱するに至った。1,4-ジオキサン溶液中、先ずディスク状の組織体が形成され、四方向からのローリング、四つのコーナーの形成、そのコーナーからの三次元化などの構造変化を経て、最終的にフラワー状組織体として、非平衡状態の沈殿として得られることが分かった。また、そのナノ組織体はアルキル鎖がイレコ組織化された二分子膜構造であることも、高分解能cryo-TEM観察、XRD測定などにより証明された。 表面のナノサイズのフレーク構造を有すマイクロ微粒子組織体は、基板上へ容易に塗布、乾燥させることで多層薄膜化できる。この薄膜表面は、水をはじく機能、すなわち超撥水性を示す。ナノ・マイクロサイズの二段階の凹凸構造を示す、疎水性素材であるため、ハスの葉様の超撥水性を達成可能であった。この薄膜は、極性有機溶媒、酸・塩基水溶液への耐性、熱(100℃)耐性を有している。また、フラーレンを素材とする世界初の超撥水素材である。さらには、この組織体を鋳型とするナノフレーク構造を持つ金属組織薄膜の創製に関する予備的知見まで得ている。
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