研究概要 |
グリーンケミストリーを指向した環境調和型反応の開発が強く求められている昨今,触媒反応における触媒の回収・再利用する手法の開発は重要な課題の一つである。そうした方法の一つにフルオラス二相系反応がある。すなわち,フルオラス(多フッ素化されたアルカンやそれに準ずる)溶媒と有機溶媒の二相系に於いて,フルオラス基を有する触媒を用いて反応すれば,フルオラス相に触媒が"固定"されるために,フルオラス相ごと触媒を回収・再利用できる。この観点から,種々のフルオラススルホンイミドアニオンを配位子とするルイス酸の開発やフルオラスクラウンエーテルの開発を行ってきた。また,PFOS/PFOA問題にも取り組み,従来の直鎖フルオロアルキルスルホンイミドの代替触媒の開発にも成功した.今年度は,新規フルオラス固体媒体の開発を行った。すでに市販されているフルオラスシリカゲルは,単純にフルオラス鎖による相互作用によりフルオラメ化合物の固定がなされており,フルオラス化合物の固定ではなくフラッシュクロマトグラフの固定相として使われていた。そこでフルオラス化合物の固定化を指向して,フルオラスメソポーラスシリカゲルの合成を行った。種々の合成法を検討した結果,Grafting法に基づくフルオラス化法により,5~11nmと大孔径を有するフルオラスメソポーラスシリカの合成に成功した。嵩高いフルオラス触媒だけでなく酵素のような大きな分子をフルオラス化(すでにいくつかで調製済み)して固定することも可能になると期待できる成果である。一方,磁性触媒については,酸化鉄(II,III)ナノ粒子を触媒とした反応を種々試みた。現在のところ,古典的アルドール反応や,イミニウム形成-エナミン合成などに用いることができ,磁石を用いたリサイクルが可能であることを見出した。さらなる炭素-炭素結合生成反応への応用が期待され,さらに検討していきたい。
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