糖質をテンプレートとして共有結合により結びつけたエチニルピリジンポリマーを各種合成した。糖質部分についてグリコシド、ガラクトシド、マンノシドの3種類、共有結合リンカーはプロピレン鎖とし、エチニルピリジン部位について従来型より長い鎖長(20量体まで)のものの合成を試みた。その結果、エチニルピリジンポリマーはらせん型高次構造の生成を示す強い円二色性をあらわした。そして、ピリジン環ひとつあたりの円二色性は環が10〜14個までは増大したが、さらに鎖長が長くなると逆に低下していった。このように糖テンプレートの効果とらせん形成の効率が距離依存性を持つことが分かった。 この距離依存性の検討から、らせん型高次構造を効率良く形成することが分かったマンノシド連結14量体を用い、アルケンメタセシスによる側鎖の架橋およびらせん型の固定を目指した実験を行った。マンノシド連結14量体を塩化メチレンに溶かし、過剰量の第二世代グラブス触媒を加えて終夜撹拌した。撹拌前の基質はメタノールにより水素結合を阻害するとらせん型高次構造が解消されてしまう一方、グラブス触媒と撹拌して得られる生成物ではメタノールを加えた溶液中でもらせん型高次構造が保持された。また、この生成物は基質からエチレン分子が架橋により失われていることが質量分析により見いだされた。これらの結果から、マンノシド連結14量体が持つアルケン側鎖はアルケンメタセシスにより架橋を受けらせん型高次構造が固定化できることが分かった。 両親媒性側鎖であるオリゴエチレングリコール鎖の使用が水溶性を確保するために有効であることが分かったため、今後はその導入までの経路を確立し、「分子ナット」の水中展開を図る。
|