天然にはリガンド結合に伴って小さいながらも構造変化が起こるリセプタータンパク質が数多く存在する。この小さな構造変化を蛍光情報に変換して増幅することにより、蛍光性バイオセンサーが構築できる。そこで本研究では、蛍光性タンパク質GFP内にリセプターを内在させたバイオセンサーの構築を行った。センサーの土台としては、イノシトール四リン酸(IP4)との特異的な結合に依存して構造が変化するBTK-PHドメインを用いた。BTK-PHドメインは、IP4の結合により特定部位の構造が変化する。この構造変化が大きな部位にGFPを挿入することにより、IP4結合によりGFPの構造変化に鋭敏に応答して蛍光が大きく変化すると考えられる。 分子設計にあたり、まずタンパク質分子設計支援ソフトであるInsightIIを用いて、タンパク質構造情報に基づきGFPのPHドメインへの融合可能な位置及びIP4の結合により構造変化する領域を評価した。その結果、BTK-PHドメインのβ1-β2間に存在するループ部位に、GFPの末端部位もしくは145位におけるcpGFPを挿入する設計が最適であると判断された。次にIP4センサーの土台となる天然タンパク質Btk-PHドメインを人cDNAライブラリーからpET系ベクターにクローニングし、Btk-PHドメイン及び上記で設計したキメラプロテインの大腸菌発現系を確立した。 作製したIP4センサーのin vitroにおけるイノシトール誘導体に対する結合特性を蛍光法により評価した結果、GFPの末端部位にPHドメインを融合したIP4センサーはIP4依存的な蛍光変化は示さなかったが、cpGFPを融合したIP4センサーはIP4依存的に蛍光強度が1.1倍上昇し、その解離定数は24.7nMであった。またにIP3対しての解離定数は10.4μMであり高い選択性を示した。 本実験は無駄や遅延なく遂行されたため、すでに申請書で提案した平成19年度研究計画の80%は達成できたと判断している。
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