研究概要 |
テトロドトキシン(TTX)は、低分子ながら高度に官能基化され、かつ多くの不斉炭素を有する海産性天然毒の代表的化合物で、神経生理学研究において重要な道具の1つとして用いられている。本研究では、天然からは見い出されていないテトロドトキシン誘導体として4-, 8-および9-デオキシテトロドトキシンおよび、それらに関連する誘導体と食物連鎖と生合成経路の追跡実験 (トレーサー実験) に必要となる標識体の合成により、これまで明らかとなっていない6, 11位以外の官能基とNaイオンチャンネルとの結合活性から構造-活性相関を明らかにすることを目的とするものである。 2(平成20)年度は、初年度に続き8-デオキシ体の合成に重点を置いて検討を進めてきたが、8位にデオキシ構造を持つ基質では、4位のグアニジン接合部位となる炭素-炭素分枝鎖の構築にこれまで全合成で円滑に進行していた反応が進行せず、ルートの変更が必要であることが判明した。また、それら基質は予期に反し不安定であり、合成上も8位の水酸基は重要な官能基であることが明らかとなった。別法にて引き続き8-デオキシ体の合成を検討しているが、その検討の過程でアミナールやアミドの効率的合成法を検討して天然物合成へ利用し成果を挙げることに成功した。一方、長い全合成の工程をより効率的に進めるべく、化合物の単離・精製操作を簡便にする1フルオラスケミストリーの検討や、新規な保護基・脱保護法の開発も検討し、一定の成果を見出すことができた (来年度発表に向け成果をまとめている) ので、今後TTX合成に利用する。
|