研究概要 |
光合成系色素蛋白複合体(=アンテナ複合体および反応中心複合体)の形成を精密に制御する光合成色素類(=クロロフィル及びカロテノイド)の微細な分子構造の違いに着目し、様々な光合成生物に対して系統的かつ網羅的にその色素組成解析を行った。その結果、光合成色素類には、従来考えられてきた以上に多様性が見られ、この多様性は外部因子(光強度、温度、溶存酸素など)に強く影響を受けることを見出した(Photosynth. Res., 95(2008)213-221)。光合成色素類の微細な分子構造の違いが、生物の環境適用を可能にし、巧みな太陽光利用を実現していることが示された(J. Porphyrins Phthalocyanines, 13(2009)41-50)。本網羅的解析は、新規色素類の発見と同定を可能にし(Carotenoid Sci, 13(2008)33-37 ; Photochem. Photobiol. Sci, 7(2008)492-497)、同時に新種の光合成生物の発見にもつながった(Rhodopseudomonaas sp. Rits株と命名 ; Photosynth. Res, 95(2008)213-221)。更に、クロロフィル色素類に関しては、その微細な分子構造改変を触媒する遺伝子群の同定とその変異株の作成にも成功した(J. Biol. Chem., 283(2008)2684-2692 ; Photochem. Photobiol. Sci, 7(2008)1179-1187)。上記の色素類の解析に加え、生体膜を構成する重要な脂質成分(=モノガラクトシルジアシルグリセリド)の蒸発光散乱検出型LCMSシステムを用いた解析系の確立にも成功した。特に脂肪酸構造と膜の安定性に焦点を絞り、高熱性細菌における脂肪酸構造の温度応答性を見出した。以上のように得られた分子レベルの構造情報を基に、色素蛋白複合体の再構成系の開発を行い、疎水性相互作用に基づく複合体の構造安定化に対して興味ある知見を得た。
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