研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)由来の電子とO_2を用いてヘムを分解する酵素であり,ヘムはα-ヒドロキシヘム,α-ベルドヘム,ビリベルジン鉄錯体を経てビリベルジン,CO,Fe^<2+>に分解される。ベルドヘムがビリベルジン鉄錯体になる開環過程には1分子のO_2と3電子が必要で,ベルドヘムのオキサポルフィリン環が一電子還元されたπ-中性ラジカル体が関与する可能性がある。昨年までの光電気化学測定を用いた実験では,ラットHO-1と複合体を形成した鉄2価α-ベルドヘムのオキサポルフィリン環に対する一電子還元の還元電位は,COが軸配位することで0.06Vほど上昇し,HO-1に結合したCO配位型ベルドヘムの環がNADPH/CPR系によって還元される可能性を示唆していた。そこで,これを検討するため,NADPHとCPRを加えた時の鉄2価α-ベルドヘム-HO-1複合体の紫外可視吸収スペクトル変化を嫌気条件で観測したところ,外来配位子を添加しない場合には反応が進行しないのに対し,COを配位させた場合にはπ-中性ラジカル体の生成がみられた。この結果は,ベルドヘムの鉄へのCOの軸配位がオキサポルフィリン環の還元電位を上昇させて,CPRから環への電子伝達を促進することを示している。生理的条件でのHOによるα-ベルドヘムの分解においても,鉄にO_2が軸配位した後,CPRによってオキサポルフィリン環が還元されて,ビリベルジン鉄錯体への転換が進行するものと考えられる。
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