本研究では、新たなポリペプチド・タンパク質骨格において、金属酵素様の触媒機能を発現する人工生体反応場を構築し、目的に適った化学反応を促進する人工金属酵素を創造することが目的である。 本年度は、自然界の生体分子の誕生と進化の過程を再現した「試験管内分子選択システム」を独自に開発した。このシステムの根幹は、金属酵素の創生から選択・進化までを試験管内レベルで再現し、目的の金属酵素機能を獲得する特殊な技術であり、本研究者の独自の構想を基にして設計・構築したものである。その一方、人工金属酵素の活性中心としての新規金属錯体の化学合成と物理化学的性質の同定にも成功した。以上は、本研究が、蛋白質工学と生物無機化学を融合したハイブリッド研究として、計画通りに展開されていることを証明している。また、ここまでの研究成果は、数多くの国内学会(日本化学会・高分子討論会・ケミカルバイオロジーシンポジウムなど)・国際会議(13th International Conference on Biological Inorganic Chemistry)・国内研究会(錯体化学若手の会)の場において発表・紹介するだけでなく、これらの成果の一部を特許化する申請を済ませている。さらに、本研究に関連した書籍を執筆すると同時に、本研究の論文化と国際的科学ジャーナルへの投稿も進めている。そして来年度は、今回得られた実験情報と知見を活かし、更なる人工金属酵素の創生と進化的機能化技術を確立することを目指す。
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