本研究課題は、温和な条件下において触媒反応を促進する遷移金属錯体を化学的に合成すると同時に、その金属錯体を部位特異的に天然タンパク質に導入することで、自然界には存在しない人工金属酵素を創生する研究である。本年度は、前年度に引き続き、金属酵素の創生から進化までを試験管内レベルで再現する特殊技術として「試験管内分子選択&進化システム」の構築と改良に取り組んだ。また、目的の金属酵素機能を獲得するための「試験管内分子選択&進化システム」の有用性を示すべく、実際に、そのシステムを利用した「人工金属酵素の創生」を試みた。その結果、金属酵素様の機能を発現する金属ペプチドの創生とそれらのキャラクタリゼーションに成功した。本年度の研究成果は、数多くの国内学会(日本化学会・高分子討論会・日本ケミカルバイオロジー研究会)と国際会議(The IUMRS(International Union of Materials Research Societies)-International Conference in Asia 2008)・理化学研究所の研究会の場において発表するだけでなく、国際的科学系図書や国際的生物工学系ジャーナル(Biotechnol. Bioeng. )の論文としても掲載することができた。現在、研究期間の終了に伴い、これまでの研究成果を「金属酵素機能を最小単位で発現する人工金属酵素の創生」として集約し、海外の著名な科学系ジャーナルの論文として投稿中である。そして、今回得られた実験的情報と知見を活かし、様々な人工金属酵素の創生と進化分子工学的手法による人工分子の生体機能化技術の確立を目指した独創的学術研究へと昇華させる予定である。
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