研究課題
プラスティックフィルム上に作製した有機トランジスタに対して、折り曲げ歪み下で精度の高いホール測定を行うことにより、フレキシビリティーと分子構造、結晶粒界の関係を明らかにすることを目的とし取り組んできた。一年目(平成19年度)にホール測定系の高精度化を目指し、低温同軸配線を用いた微小電流測定プローブを立ち上げ、フレキシブルなペンタセントランジスタのホール効果の温度依存性を詳細に調べることができた。また、サブフェムトリットルインクジェットを用いてデバイスの微細化に取り組み、チャネル長1ミクロンの微細電極を持つ有機トランジスタの作成に成功した。2年目(平成20年度)には、ペンタセンとは異なる結晶構造を持つ有機物、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、チオフェン系高分子、NTCDI(N型多結晶有機半導体)などの有機半導体を用いた有機トランジスタのホール測定を行い、分子間距離や結晶粒界が伝導メカニズムを明らかにしてきた。最終年度(平成21年度)には、有機トランジスタに系統的な折り曲げ歪みを加えたときのホール測定を行い、伝導現象における分子間距離や結晶粒界の関係について調べることを目的とした。特に、Hall測定を中心とした伝導特性と微小スポット径を持つX線回折装置や原子間力顕微鏡(現有)を用いて分子構造など構造変化との相関を明らかにすることができた。一連の研究を通じて、有機トランジスタのような高インピーダンスのHall測定技術を確立すると伴に、結晶粒界内でのバンドライクな伝導と結晶粒界間の熱的励起(ホッピング)伝導が融合した特異な伝導機構を明らかにすることができた。また、これらの伝導が折り曲げ時にどのように変化するのかについても、明らかにすることができた。これら基礎的な伝導機構解明を行う中で、新しいフレキシブルデバイスの開発に着手し、伸縮できるディスプレイや世界で初めてプラスティックフィルム上に大面積有機フラッシュメモリの開発にも成功した。一連の成果は2009年5月の英国Nature Materials誌や12月の米国Science誌の掲載され、話題を呼んだ。
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Advanced Materials on-line
ページ: DOI:10.1002/adma.200904054
Science 326
ページ: 1516-1519
Nature Materials 8
ページ: 494-499