プロトン移動を伴う水素結合はその強い静電相互作用により結晶内での分子配列制御を担う重要な役割を担います。ところが近年、代表者らのグループは、水素結合の存在が配列制御のみならず、伝導性発現に大きく関与していることを見いだしました。本研究では、極めて活性の高いシラノールを用いてこの原理を拡張することを目的に致しました。かさ高い置換基を導入したシラノール誘導体を合成しましたが、シラノールの高い活性を制御することは困難でした。そこで、代表的なドナー分子であるテトラチアフルバレンに水素結合官能基を導入してプロトン移動を伴う水素結合を形成したところ、伝導性が発現し、さらに、低温領域においてプロトンと重水素の間で大きな同位体効果が発現することを見出しました。これは、プロトンが伝導性発現のメカニズムに大きく関与していることを示す強い証拠となります。
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