研究課題
シンチレータデバイスはX線検出器・高エネルギー物理・医療用機器など様々な応用分野を持ち、今後更なる普及が予想されるが、現状で最高の特性とされるCe^<3+>の5d-4f遷移を利用した酸化物シンチレータは蛍光寿命が40〜100ns程度とそれほど短寿命ではないことが課題である。そこでこの問題を克服すべく、Pr^<3+>の5d-4f遷移を利用した新規シンチレータ材料の探索を行った。従来のホスト材料に要求される性質に加え、バンドギャップ・結晶場・屈折率など複数の指針に基づき、マイクロ引き下げ法を用いてコンビナトリアル的に単結晶材料の探索を行った。RE_2SiO_5、YAlO_3といったホスト結晶を用いた場合の特性を明らかにしたほか、高い特性を持つことで注目されているPr:Lu_3Al_5O_<12>(Pr:LuAG)のAlサイトをGaで置換(Pr:LuGAG)することにより特性向上が図れることが分かった。Pr:LuAGのGa置換を行うにより、発光強度自体の若干の低下は見られるものの、高密度化、蛍光寿命の短寿命化、蛍光寿命のバックグラウンド成分の低減という三種類の変化が見られた。特にバックグラウンド成分の低減については、Ga置換量が低い領域でも顕著に発現することが分かった。放射光を用いたVUV領域の励起スペクトル測定などにより、この現象はLuAG結晶のバンドギャップ狭窄化により、結晶欠陥における励起子の捕獲準位が浅くなっていることが原因であることが示唆された。これは束縛励起子の無輻射緩和による失活確率を低減する効果があると考えられ、Ga置換量の最適化により、発光量に関してもPr:LuAGを上回る特性を示す可能性もある。今後はGa置換量の最適化を図るとともに、これらの特性変化のメカニズム解明を目指す。
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IEEE: Trans. Nucl. Sci. accepted (印刷中)(掲載確定)
Jpn. J. Appl. Phys. 46
ページ: 3514-3517