研究課題
ガンマ線等の高エネルギー粒子検出用には主に単結晶シンチレータが用いられているが、様々な材料系において、酸素欠損やアンチサイト欠陥など、結晶に内在する点欠陥が欠陥準位を形成し、発光量の減少、蛍光寿命の長寿命化などシンチレーション特性に悪影響を与えていることが報告されている。Lu3Al5O12(LuAG)系シンチレータでは、単結晶を融液成長法で作製した場合Alサイトの一部がREで置換されるアンチサイト欠陥が形成され、これが原因となってLuAG系シンチレータでは、数10nsの寿命を持つ主成分の発光とは別に、μs〜msオーダーの長寿命発光がかなりの割合で生じることが報告されている。微量元素の添加による欠陥密度低減などの試みは行われているものの、これら結晶中に存在する点欠陥とそれに影響された物性は、その材料系本来の特性と考えられて来た。本研究では、融液成長で作製されたガーネット系単結晶において、固有の問題と考えられてきたアンチサイト欠陥と発光の長寿命成分について、ホストの化学組成を変化させることにより制御を試みた。LuAG結晶のAlサイトをGaで置換した試料を作製・評価した。10%程度のGa置換によりホスト発光の消失、蛍光寿命の短寿命化・バックグラウンド成分の低減が見られた。この変化は欠陥準位中の電子の輻射再結合に由来する長寿命成分の低下を示しているが、Pr : LuAGの熱励起ルミネッセンス測定結果などから、これはGa置換により欠陥準位が浅くなり、室温領域における欠陥準位の寄与が低下したためと考えられる。今後Ga置換量の最適化や結晶作製条件の改良などによりさらに高い特性も期待できる。
すべて 2008
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IEEE : Trans. Nucl. Sci 55
ページ: 1197
J. Cryst. Growth 311
ページ: 908-911