研究成果 本研究ではメタノール透過量を減らし、電池性能を向上させることを目的として、新規スルホン酸化ポリイミド電解質(c-SPI)をDMFC用の電解質膜として用い、その性能を評価した。 電解質膜には、種々の膜厚のc-SPI膜(膜厚:50μmまたは155 μm)あるいは比較対照としてのNafion膜(膜厚:50μmまたは180 μm)を用い、アノード触媒にはPt-Ru/CB (1 mg-Pt/cm^2)、カソード触媒にはPt/CB(1 mg-Pt/cm^2)をNafionイオノマーと伴に用いた。電池特性は、定常状態での分極を測定することにより評価した。アノードからカソードへのメタノール透過量は、カソード出口のC02をガスクロマトグラフにより定量し、電流密度j[CH_-30H]に換算した。膜内の水の分布測定には、厚さ30μmまたは25 μmの電解質膜の間にPtプローブ(直径15 μm)を挿入し、ホットプレスした膜を用いた。端子間の距離は、DMFCの両極に充分に加湿した水素を流した状態でカレントインタラプタ法により抵抗を測定し、その値を基に算出した。各プローブ挿入部分の面積抵抗値から、比抵抗ρを計算した。 カソード側に近い部分でρは高くなり、アノード側に近づくにつれて減少した。特に、アノード側から約50μmまでのρは、ほぼ同じ値で低く保たれていた。アノードからの距離が約100 μm以上からカソード方向に向かってρが直線的に増加した。カソード側は比較的乾燥した酸化剤ガスに触れて膜が乾燥するために、ρが高くなったと考えられる。電流密度が増加するとρが減少しだの、は、カソード生成水の逆拡散によるものである。他方、アノード側にはメタノール水溶液が供給されているため、十分に膜が加湿されてρが小さくなったと考えられる。本実験結果は、アノードから約50 μmまではメタノールが水とともに自由に浸透することを示している。膜厚増加によって期待されるほどj(CH_30H)は、抑制されないことがわかった。
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