チタン酸ナトリウムナノチューブ薄膜のアナターゼ型酸化チタンナノチューブ薄膜への変換方法を確立した。また、チタン酸ナトリウムナノチューブ薄膜に対して銀イオン交換処理を行うことにより、抗菌性を有する銀ナノ粒子-チタン酸銀ナノチューブ複合体薄膜に変換した。この薄膜からの銀イオン溶出特性と銀板からの銀イオンの溶出挙動との比較や、溶出試験前後の試料のX線回折図より、溶出試験の初期段階ではチタン酸銀からの銀イオンの溶出が大量に生じていることを明らかにした。また、薄膜X線回折測定をもとに、チタン酸ナトリウムの銀イオン交換処理によってチタン酸の層状構造が三次元構造に変換されていることを明らかにした。さらに、各種チタン化合物ナノチューブの擬似体液中でのアパタイト形成能を調べたところ、銀ナノ粒子-チタン酸銀ナノチューブ複合体薄膜のアパタイト形成能がアナターゼ型酸化チタンナノチューブ薄膜とほぼ同等で、チタン酸ナトリウムナノチューブ薄膜やチタン酸カルシウムナノチューブ薄膜やチタン酸水素ナノチューブのアパタイト形成能よりも高いことがわかった。また、生体材料として用いられる種々の基材上での、水熱転写法によるチタン酸ナトリウムナノチューブ薄膜の形成について検討したところ、Co-Cr合金上やSUS316L上にはナノチューブ薄膜が形成されるのに対して、アルミナ及びジルコニア上ではナノチューブ薄膜が形成されないことがわかった。 また、ナノチューブ体、ナノシート体、ナノファイバー体、不定形状体のチタン酸ナトリウム薄膜のMRSAに対する抗菌性を調べたところ、ナノファイバー体のみが特異的に高い抗菌性を示すことが明らかになった。 複合酸化物ナノチューブの合成方法を確立し、合成条件によりナノロッドやナノワイヤーなどにナノ構造を制御できることがわかった。
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