研究概要 |
本研究の目的は,無容器浮遊法によって機能性チタン酸化物球状ガラスを開発することである.特に,優れた光学特性と特異なTi-5配位構造を持つBaTi_20_5ガラスをホスト材料として,TiO_2や希土類イオンを導入することで光機能性を付与する.また,機能材料としてのBaTi_2O_5系ガラスが持つポテンシャルを明らかにするために,局所構造解析の手法を用いて機能発現のメカニズムを解明する. 今年度は組成式Ba_<1-x>Ln_xTi_2O_<5+δ>(Ln=La-Lu)の球状ガラスをガス浮遊炉で作製し,その熱物性,光学特性を測定することで,以下に示す知見を得た. 1.BaTi_2O_5ガラスの屈折率に関して可視光領域での分散曲線を得た.屈折率(波長588 nm)は2.14,アッベ数は21.4であった.また,紫外・可視吸光分光測定から,可視光から近赤外領域まで透明であることがわかった.吸収端から見積もった光学バンドギャップは2.9eVであった. 2.Ba_<1-x>Ln_xTi_2O_<5+δ>ガラスにおける希土類イオンの置換量xの最大値が,0.45であることを明らかにした 3.Ln=Luのガラスは無色透明であり,また置換量とともに屈折率の増大が見られた. 4.Ln=ErのガラスではEr^<3+>に起因する淡赤色を呈した.また,x=0.05近傍で強いアップコンバージョン蛍光を確認した.紫外・可視吸光分光測定を行ったところ,Er^<3+>のf-f遷移による吸収が見られた.ここからJudd-Ofelt理論に基づく解析を行い,オメガパラメータΩ_t(t=2,4,6)を算出した.このうちΩ_2が比較的大きな値を示した.このことはBaTi_2O_5のBaサイトの環境に非対称性が高いことを示唆しているこれらの結果はTiO_2を主成分とするガラスで得られた初めての結果であり,基礎科学的に重要な成果であると言える.また,得られた高い屈折率は将来の実用化に直結する優れた値であった.
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