研究概要 |
本研究の目的は, 無容器浮遊法によって機能性チタン酸化物球状ガラスを開発することである, 特に, 優れた光学特性と特異なTi-5配位構造を持つBaTi2O5ガラスをホスト材料として, TiO2や希土類イオンを導入することで光機能性を付与する.また, 機能材料としてのBaTi2O5系ガラスが持つポテンシャルを明らかにするために, 局所構造解析の手法を用いて機能発現のメカニズムを解明する.今年度は組成式BaTi2O5, Bal-xErxTi2O5+d(0<x<0.5)の球状ガラスをガス浮遊炉で作製し, その熱物性, 光学特性を測定することで, 以下に示す知見を得た. BaTi2O5ガラス ガラス転移温度以上に温度を上げていくと, 2つの準安定相α, βが現れることと, α相の結晶化に伴って巨大な誘電応答が発現することはこれまでの研究からわかっていた.今回, α相の結晶化温度で第二高調波が発生することを見出した.このことは, α相の結晶構造が極性を持つことを示しており, 巨大誘電応答の起源となっていることが明らかとなった. Ba1-xErxTi2O5+dガラス 1.Erイオンの置換量xの最大値が0.5であることを明らかにした. 2.得られたガラスはEr3+に起因する赤色を呈した, また, x〜0.05近傍で最も強いアップコンバージョン蛍光を確認した.Er置換球状ガラス試料を研磨して平行な面を出し, この試料について, 紫外・可視吸光分光測定を行ったところ, Er3+のf-f遷移による吸収が見られた.ここからJudd-Ofelt理論に基づく解析を行い, オメガパラメータを算出した, オメガ2, 4, 6の中でオメガ2が比較的大きな値を示し, このことからもBaTi2O5のBaサイトの環境に非対称性が高いことが示唆される結果である. 3.980nmの光で励起した場合の, 赤外発光について調べたところ, シリカ系ファイバーよりも長波長側にブロードなピークとなっていることがわかった.このことは, Er3+イオンの周りの結晶場に多様性があることを示している. これらの結果はTiO2を主成分とするガラスで得られた初めての結果であり, 極めて重要な成果であると言える.また, 示された数値は将来の実用を考えた場合でも, 十分な価値があると考えられる.
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