研究概要 |
環境(温度)に応答し内部が変化するミセルから,ナノコンテナの合成を目指し,シーケンシャルリビングカチオン重合により,環境応答性セグメントと親水性セグメント(光架橋基を含む)からなるジブロックコポリマーを合成した。このジブロックコポリマーは,熱環境に応答し親水性から疎水性へと変化するセグメントA,水に溶解する親水性セグメントBからなる。Bのセグメントには,光架橋性ユニットを予め導入しておき細工を施した。 合成方法は,エステル存在下でのリビングカチオン重合を利用したが,検討を進めていく途中で,メタルフリーリビング重合を見出したため,先に本方法を速報として論文誌に公表した。 このようにして得られた種々のジブロックコポリマー水溶液(0.01wt%)を加熱したところ,組織体を形成した。これは,LCST型のセグメントが熱環境に応答し疎水化したためであると考えられる。この状態からまた低温にすると,組織体が見られず,単にポリマーが水に溶解した状態であった。この組織はミセルであり,このミセルの臨界ミセル濃度と温度を染料可溶化法によって求め,その臨界濃度と温度以上に系を保ち,パーコレーション濃度以上で光照射しミセル外郭を架橋した。得られた組織体は,ナノオーダーのコンテナであり,粒径は架橋前のミセルと同程度大きさ(50nm〜100nm)を有していた。また形状は温度にほとんど依存せず,粒径は重合度が低いほど小さかった。本コンテナは,低温で内部を空洞化(親水化)できた。温度可変NMRより,コンテナの動的状態を確認し,真球コンテナであることを確認した。このコンテナに銀イオンや金イオンを加え,内部で還元したところ,コンテナにそのまま還元された金属がナノオーダーで残存したため,ハイブリッドナノコンテナの合成に成功したことが確認できた。
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