研究概要 |
本年度は,数種類のポリエチレンブレンドに対して顕微鏡及び小角X線散乱測定を用いて構造形成過程を観測した.まず,結晶性ポリエチレンと非晶性ポリエチレンを混合させたブレンドサンプルについて述べる.結晶化温度での結晶成長過程を光学顕微鏡で観測した.特に,相分離を引き起こす融点よりも十分高い温度での熱処理による変化に着目して行った.その結果,顕微鏡でも観測可能なミクロンオーダーの球晶の核の数が融点よりも高い温度の熱処理によって減少していることを示した.そこで,高エネルギー加速器研究機構・放射光研究実験施設の小角X線散乱装置(BL10C)を用いて,ナノメートルスケールのラメラ晶の成長過程を時分割で観測した.熱処理によって相分離させると,熱処理しない場合に比べて結晶化度が非常に小さくなり,さらに熱処理時間を長くすれば結晶化度はより小さくなっていることを示した.このことから,相分離によって結晶成長,特にラメラ晶の成長が阻害されていることを示した.一方,相分離が起きないような系では,同じ温度条件で熱処理させてもほとんど依存性がないことを示した.さらに,分子量を変えたポリエチレンブレンドサンプルについて,流動印加時における構造形成過程を時分割小角X線散乱や光散乱測定を用いて測定した.本実験では,特に分子量が高い成分が結晶成長過程に対する流動(外場)の影響に着目して測定を行っている.そのような場合,分子量が高い成分は流動印加によって分子鎖が伸び,配向構造が作りやすくなっていることを示した.
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