研究概要 |
光開裂性官能基を有する新規な架橋剤として多官能ジチオカーバメート誘導体(TUT)を合成した。TUTは、エチレングリコールとクロロプロピオニルクロライドを原料として得られたヒドロキシエチルクロロアセテートとジエタノールアミンと二硫化炭素を原料とすることで合成した。 TUTを用いてプレポリマー法により架橋ポリウレタンの合成を行なった。原料には、ポリプロピレングリコール(PPG)と4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いて両末端イソシアネートのポリマーグリコールを調整し、これにTUTを加えて80℃に加熱し弾性のある白色固体を得た。得られたす白色個体は、種々の溶媒に不溶である事から架橋ポリウレタン(CPU)であることが分かった。CPUは、示差走査熱量(DSC)測定の結果、ガラス転移温度が原料のPPGよりも高温へ上昇したことから架橋反応によって分子運動性が抑制されたと考えられる。力学物性、動的粘弾性測定の結果から、得られたCPUは、エラストマーであることが明らかとなった。光解架橋による塑性変形について検討するために、ひずみをかけた状態で光照射を行いその応力の変化について検討したところ光照射により応力が低下した。このような現象が見られる高分子は報告されておらず、これまで不可能であった架橋高分子の塑性変形を実現した点でに極めて新規性の高い材料の創製に成功したといえる。 しかしながら、得られた試料は白色固体であるために試料全体へ均一に光照射を行なうことが困難であった。得られた架橋ポリウレタンの原料に用いたMDIは、結晶性が高いために試料は白色となり、光の透渦率が著しく低下したと考えられるが、原料を変えることで無色透明の試料が得られ、さらに優れた成果が得られると期待される。
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