サポナイト、ヘクトライト、フッ素四ケイ素雲母、モンモリロナイト、フルオロヘクトライトの各層状粘土鉱物ナノシート存在下でN-イソプロピルアクリルアミドのラジカル重合を行うことで、種々の複合ゲルの合成を試みた。すべての系で十分な強度を持つゲルが得る事に成功した。さらには、得られたゲルの性状や物性は用いる粘土の種類によって大きく異なることを明らかにした。 例えばモンモリロナイト系では他のすべての系に比べて高いゲルの平衡膨潤度(80倍以上)を示した。ゲルの温度誘起体積相転移挙動を検討した結果、すべての系において32℃付近での体積相転移が確認されたが、フルオロヘクトライト系での体積収縮率(10℃から40℃への温度変化による)は約525%であり、ラポナイト系(約50%)や化学架橋ゲル(約70%)に比べて小さな値となった。 またフルオロヘライト系の試料について偏光顕微鏡(クロスニコル下)でゲルを観察したところ、粘土ナノシートが一方向に強く配向した液晶状態であることがわかった。この複合液晶ゲルの温度体積相転移挙動を検討したところ、液晶の配向方向と垂直な方向と水平な方向で異なる体積収縮率を示すことがわかった。 以上のように、エントロピーに誘起された無機ナノシートの液晶配向を利用することで、温度応答性高分子ゲルのマクロな物性制御に成功した。今後さらに、粘土粒径や濃度をパラメータとした物性制御を試みる予定である。
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