フルオロヘクトライトおよびフッ素四ケイ素雲母という、2種類のナノシート液晶系を新たに見いだし、液晶相転移挙動と構造について詳しい検討を行った。フルオロヘクトライト系について、様々な濃度のコロイドについて液晶相の体積分率φを測定したところ、0.2wt.%付近から液晶相が出現し始め、3.7wt.%付近で試料全体が液晶相となることがわかった。さらに、平均粒径の影響を検討したところ、平均粒径が小さい場合、液晶相はより高濃度で出現しはじめた。類似の挙動はフッ素四ケイ素雲母系でも観察された。これらの結果は、排除体積効果に基づくナノシートゾルの液晶転移を裏付けるものである。中性子小角散乱では、フラクタル構造およびラメラ構造の共存する特異な構造が存在することが明らかとなった。 さらに、熱応答性の高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)とナノシート液晶を複合化した新規ゲル物質を合成し、異方的な物性の発現について詳しい検討を行った。フルオロヘクトライト系の複合ゲルをクロスニコル観察したところ、ゲル全体にわたって強い干渉色が観察され、屈折率異方性を有することが分かった。キャピラリー管中で合成したゲルでは、管壁に沿ってマクロスコピックな配向が見られた。複屈折率は約3x10^<-4>であった。屈折率異方性を示したフルオロヘクトライト系複合ゲルは体積相転移においても強い異方性を示した。複合ゲルは通常の化学ゲルと同様に34℃付近で急激な体積相転移(体積収縮)を示した。しかし、その収縮率はゲルの光軸と平行な方向と垂直な方向で異なたており、平行方向で15%、垂直方向では25%となった。これらの異方的な物性は、化学架橋点の導入、ナノシートの濃度、ナノシートの種類によって効果的に制御可能であることが分かった。
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