カルコゲナイド材料を用いた相変化電気メモリーにおいて繰り返し記録の信頼性の向上は重要な課題である。信頼性の向上のためには安定に書き込みできる電圧印加条件を探る必要があり、高電界における伝導機構の理解が求められる。しかしながら高速結晶化が可能な新しい材料の電気伝導特性、特に高電界現象の詳細は不明である。そこで、相変化電気メモリーへの応用開発が進むアモルファスGe_2Sb_2Te_5薄膜の高電界特性を調べ、伝導機構についてモデルを提案することを目的とする。 直流スパッタ法によりアモルファスGe_2Sb_2Te_5薄膜を作製した。ギャップ間隔10μmのプラナー型の電極配置とし、電極材料にはAuを用いた。電圧の印加条件や測定温度を変えて電流電圧特性を測定し、特に高電界領域における特性の変化(プレスイッチング領域)に注目した。平成19年度に設備備品として購入したデジタルストレージオシロスコープにより、高速スイッチングの詳細な観測を行ない、さらに、熱処理によるスイッチング特性の変化について調べた。 電流電圧特性には10^6V/m以上で非線形領域への遷移が見られる。スイッチングが生じる電界以下では、高電界を印加後、電圧を降下させてもスイッチングや結晶化のようなヒステリシスは見られなかった。高電界領域でlogIvsV^(1/2)プロットには良い直線性が確認できた。一方、266Kから323Kまで試料温度を変えたとき、logIvsV^(1/2)プロットの傾きには正の温度依存性が見られた。これらの実験結果より10^6V/m以上の電気伝導にはPoole-Frenkelタイプのトラップからの電子放出が関わっている可能性がある。
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