研究概要 |
本研究ではラングミュア・プロジェット(LB)膜と有機無機層状ペロブスカイトの結晶構造の類似性に着目して、あらかじめ基板上にLB法で作成した有機薄膜に無機層をインターカレートすることにより有機無機層状ペロブスカイト膜を得る方法の確立を目的とした。また、一次元構造を有する新規有機無機複合物質を自己組織化法を用いて作成し、その低次元物性を明らかにすることも目的とした。 本年度は、有機層にステアリルアミン、無機層に遷移金属ハロゲン化物イオンを選定し、LB法による有機薄膜の累積条件、インターカレーション反応における最適条件の検討を行った。研究の結果、ステアリルアミンLB膜への無機イオンのインターカレーションが起こるためには、LB膜が液体凝縮膜の状態である必要があることを明らかにした。本方法によって得られた有機無機層状ペロブスカイト薄膜はLB膜の良好な結晶性を維持しており、結晶性の高い膜が簡便な方法で得られた。水溶液中での遷移金属ハロゲン化物のインターカレーション反応の進行速度はヨウ素>臭素>塩素の順であり、反応速度は遷移金属の種類にほとんど依存しない。 本方法によって得られた有機無機層状ペロブスカイト薄膜((C_<18>H_<37>NH_3)_2CuCl_4を石英基板上に10層形成したもの)の帯磁率をSQUID磁束計を用いて測定したところ、低温で自発磁化が観測された。キュリー温度の低下が観測され、薄膜化により内部磁場の減少が生じている可能性が考えられる。 さらに、一次元有機無機複合物質Cu(Q)C1_2,Cu(DEP)Br_2の結晶を自己組織化法により作成し、その磁性を調べた。いずれも低温で磁性が消失する量子磁性を示し、磁性の低次元性が顕著となる結果が得られた。以上、自己組織化を利用して低次元有機無機複合物質が容易に得られること、その物性は低次元性を反映した特異なものであることを明らかにした。
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