研究概要 |
今年度は、透過位相差顕微鏡による結晶表面のステップ観察システムの立ち上げに特に重点を置いて行ってきた。収差補正用の補正環を備え、コンデンサレンズが可動であり、しっかりとした筐体をもつ顕微鏡システムおよび高品質な画像記録性能を持つデジタルカメラシステムを購入した(NikonTE2000U, DS-Fi1-U2)。また、対物レンズの選定も3本をデモし、最も解像度の高かったレンズを採用した。その結果、glucose isomerase結晶の{101},{011}{110}各面上の単位ステップをクリアに観察することができた。また、光路中にスライドガラスを複数枚重ね、収差の大きい状態にしてもステップを観察できることを明らかにした。高圧セルヘの適用可能性が高まったといえる。 高圧力下での実験については、初期データの内容をまとめ、Crystal Growth & Design誌へ投稿中である。しかし、実験の難度の高い状況を打破することに予想以上に難航している。内部セル方式を現在模索中であるが、初年度中には余り進展せず初期データ以上のデータ収集はできなかった。 さらに高圧力下での結晶中での分子構造が、今後分子取り込みメカニズムの詳細な議論を行う際に重要になることを考え、高圧力下で育成したglucose isomerase結晶の常圧下構造解析も行った。その結果、常圧下で育成した結晶と分子構造および構造水に変化がなかった。これは、glucoseisomeraseがもともと固い上に強固な4量体を形成し、構造に変化がなかった可能性もあるが、更なる詳細は高圧力下でのその場構造解析を行う必要があり、現在遂行中である。この結果は高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジーに原著論文として投稿中である。
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