研究概要 |
新材料Cu_2ZnSnS_4(以下CZTS)薄膜は,次世代薄膜太陽電池として開発されている Cu(InGa)Se_2薄膜光吸収層の稀少元素In, GaをZn, Snで置換し,有毒元素SeをSで置換した化合物半導体である。この材料は環境負荷が小さく,次世代太陽電池材料として有望な材料である。本研究では,非真空プロセスである電解めっき法を用いたプレカーサから気相硫化によって得られたCZTS薄膜の表面観察,構造評価および組成評価を行い,次世代太陽電池光吸収層薄膜としての最適な製膜条件を見いだし,Zn0窓層/CdSバッファ層を用いた太陽電池デバイスの作製を目的とした。 Mo薄膜コートしたガラス基板をPdでコーティングした後,電気化学測定システムを用いた定電流法によりCu, Zn, Snの各めっき層を積層したプレカーサを作製した。このようにして作製された積層プレカーサ膜を硫化炉の硫黄雰囲気中で硫化アニールすることでCZTS薄膜を得た。走査電子顕微鏡による表面・断面の観察,SEN-EDXや蛍光X線分析による薄膜組成の評価,X線回折による構造評価から,プレカーサの各金属層の電解めっき時間および硫化温度の最適化を行うとともに,glass/Mo/Pd/CZTS/CdS/Zn0: A1/A1構造を作製し,太陽電池光吸収層薄膜としての最適な製膜条件を検討した。その結果,開放電圧262mV,短絡電流9.85 mA/cm^2,変換効率0.98%のデバイスの作製に成功した。本結果は、非真空プロセスである電解めっき・硫化法により作製した光吸収層を用いた太陽電池において,初めての変換効率を報告したものであり,非真空プロセスを用いて低コストでCZTS系薄膜太陽電池が作製できる可能性を示すものである。
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