研究概要 |
液体窒素温度以上で動作可能な高周波ミクサおよびSQUIDの実現を目指し, 高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi-2212)を用いたスタック型トンネル接合の高品質化に関して研究を行った. Bi-2212単結晶の成長技術に関しては, 熱処理時に用いる坩堝材料(アルミナ)と初期粉末材料(Bi_2O_3, SrCO_3, CaCO_3およびCuO)の溶融体が反応し副生成物が発生してしまう問題に取り組んだ. この副生成物の化学的分析を行い物質名(BiSr_2CaAl_3O_9)と特定した. また, アルミナ坩堝の純度とBiSr_2CaAl_3O_9の生成量の関係について調査し, アルミナ坩堝の純度が高い(99, 9%)場合, BiSr_2CaAl_3O_9は殆ど生成されない知見を得た. アルミナ坩堝に不純物として含まれるケイ素がBi-2212の溶融体とアルミナとの反応の触媒として働き, 結果としてBiSr_2CaAl_3O_9が生成されると考えられる. 結論として高純度のアルミナ坩堝を使用すれば副生成物の生成を抑えることができることがわかった. これらの知見は, 高品質なBi-2212単結晶の合成にとって非常に有用なものである. トンネル接合の作製技術に関する研究に関しては, 高周波ミクサへの応用を想定して自己平坦化法により形成した絶縁層(BiOCl)の比誘電率と絶縁抵抗の評価を行った. このBiOCl層は, 膜厚を10nm程度と極薄にする必要があり, THz帯での高周波応用を考慮すると低い比誘電率(εr<10), および高い抵抗率が求められる. 測定の結果, 比誘電率はεr=2.1〜3.5と低い値を有しており自己平坦化法を用いて作製した素子は, 高周波応用に適していることがわかった.
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