二ホウ化マグネシウム(HgB_2)のコネクティビティ改善による臨界電流密度(J_c)特性向上の研究を行うに当たり、まず、反応過程の解明、局所的J_cの特性評価、原料粉末および不純物が与える影響について、研究を実施した。 マグネシウムと硼素の反応過程について、検討を行うため、熱処理温度を500℃〜600℃、保持時間を1分〜100時間まで変化させた試料の作製を行った。X線観察結果から500℃、1分の低温、短時間の熱処理でもMgB_2が形成されていることがわかった。また、電気抵抗率測定においても超伝導遷移温度が37K程度であることがわかった。しかしながら、J_c特性は大きくないことから、線材内部において形成されたMgB_2の量が低いことが示唆される。つまり、反応時間の増大および反応温度の上昇に伴い、線材全域にMgB_2が形成されていくことがわかった。今後、電子顕微鏡観察等によって詳細な検討を行う。 薄膜試料においては高いJ_c特性を有することがわかった。薄膜の作製はパルスレーザー蒸着法によって作成したプレカーサー膜を後アニールによってMgB_2を形成させる方法を本研究では用いた。この薄膜は約500nmの厚さを有している。局所的な特性を調査するために本研究ではイオンミルによる表面層の研磨が適切であることを示すことができた。 これまでの研究においてナノサイズの炭化珪素が不純物として有効であり、10mol%SiCの添加量まで研究報告を行ってきた。今回、MgB_2に対して60mol%の添加量まで実施し、その特性評価および組織変化について詳細に検討を行った。C置換による上部臨界磁界(H_<c2>)上昇のための最適添加量は30mol%であった。H_<c2>の増加とともに高磁界側でのJ_c特性も向上した。一方、さらなる添加によってJ_c特性は全磁場領域において低下することがわかった。
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