研究課題
二ホウ化マグネシウム(MgB_2)は高いポテンシャルを有しているにもかかわらず、十分な臨界電流密度特性が得られていなことについて粒間における電流経路有効断面積(コネクティビティ)を含めた観点から研究を行っている。本年度では以下に示すような成果が得られた。MgB_2線材については素反応過程を見るために種々の時間で熱処理を行った試料を作製した。MgH_2およびアモルファス状の硼素(B)と不純物としてのナノサイズ炭化珪素(SiC)の混合粉末を初期粉末として金属管に詰め込み、4mm幅、0.5mm厚さのテープ形状に加工を施した。熱処理温度は600℃として、種々の時間における線材の組織観察を行った。その結果、熱処理の初期段階ではMgH_2→Mg+H_2の分解反応が起き、そのMgがB側へ拡散していく。このときB_2O_3などの酸化物として存在していた酸素がMgと反応して、MgOを形成していく。MgOの反応が終了後、MgB_2の生成が始まる。このときSiCの分解も起こり、分解したSiとMgが反応してMg_2Siが形成されていく。これらの素過程の結果、MgOがMgB_2結晶同士の粒界に分布したような組織と残留したアモルファスB領域、およびMg_2SiとSiCが微細分散した組織が形成されることがわかった。微細な不純物は超伝導電流経路の阻害要因にもなるが、ピン止め点としても働き、高臨界電流密度特性に寄与する。一方、薄膜についてもSiCを添加した薄膜の作製を行った。無添加薄膜の超伝導転移温度と比較すると急激な減少が起こっていることがわかった。しかしながら、SiC添加薄膜では臨界磁界が転移温度近傍から急激に立ち上がり、ゼロKで約40Tもの高い臨界磁界を有していることがわかった。これは炭素がBサイトに置換して電子の平均自由行程が無添加のものより小さくなったためと考えられる。
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低温工学学会誌 43
ページ: 317
SUPERCONDUCTOR SCIENCE & TECHNOLOGY 21
ページ: 115013